2014年7月18日金曜日

寄与分について教えて下さい

被相続人Pが,遺言を残さずに亡くなってしまいました。
相続人であるあなたQは,Pの事業に協力し,Pの財産形成に一定の貢献をしたものと自負しています。
一方で,もう一人の相続人であるRは,この10年以上音信不通でしたが,健在です。

QとRは,法定相続分に従ってPの遺産を分ける必要があるのでしょうか。





法定相続分は,公平の観点から修正を受けます。

被相続人から,生前に受けていた利益(被相続人の遺産から削られてしまった部分)については,特別受益として調整されます。
特別受益について → http://o-h-law.blogspot.jp/2014/07/blog-post_9.html

逆に,被相続人の遺産形成に寄与した場合にも,寄与分として調整の対象となります。

寄与分については,民法904条の2に定められています。

1 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

寄与分が認められる相続人は,
「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」です。
被相続人の財産を増加させた場合に限るわけではない,というのがポイントです。

また,その方法としては,労務の提供,財産上の給付,療養介護などが挙げられていますが,これらに限ったものではありません。


それでは,寄与分の計算はどのようにするのでしょうか。

相続財産 6000万円
相続人 A,B,C,D
法定相続分は Aが1/2,Bが1/6,Cが1/6,Dが1/6,という場合を考えてみましょう。

法定相続分で分けるならば,
Aは3000万円,Bは1000万円,Cは1000万円,Dは1000万円,となりますね。

ところで,Bは被相続人の事業を手伝っており,寄与分が認められます。
A,B,C,Dの話し合いで,Bの寄与分が1500万円あったと認められました。
すると,どのように分けることになるのでしょうか。

まず,Bが寄与した1500万円を相続財産から控除します。
すると,6000万-1500万=4500万円。
次に,これを法定相続分で分けます。
Aは2250万円,BからDは750万円ずつです。
さらに,寄与分の認められるBに,その金額を足します。
Bは,750万+1500万=2250万円となります。
結局,Aは2250万円,Bは2250万円,Cは750万円,Dは750万円となります(合計6000万円)。

民法904条の2は,この計算方法が定められています。


それでは,寄与分について,相続人間に争いがある場合はどうでしょうか。

この場合は,裁判により寄与分を定める方法をとることになります(同条2項)。
寄与分の金額は,財産の維持によっても認められ得ることからもわかるように,かならずしも被相続人の財産上にはっきりと出てくるわけではないので,特別受益以上に分かりにくく,すべての相続人に納得してもらったうえで,寄与分の話し合いがうまくまとまる,という事はあまりありません。
その場合には,遺産分割調停の手続きの中で,寄与分を申し立てることになります。

なお,寄与分と特別受益が両方ある場合には,次のような計算になります。

相続財産 1億円
法定相続分 Aは1/2,Bは1/4,Cは1/4
Bの特別受益 3000万円
Cの寄与分  1000万円

まず,特別受益の金額を足し,寄与分の金額を引く
1億+3000万-1000万=1億2000万円
次に,その金額を法定相続分で分ける。
Aは6000万円,Bは3000万円,Cは3000万円。
特別受益の金額を引き,寄与分の金額を足す。
Aは6000万円,Bはゼロ,Cは4000万円(合計1億円)。

なお,寄与分として調整しても少なすぎるから他の相続人に請求できる,ということはありません。

相続財産 2000万円
法定相続分 Aは1/2,Bは1/4,Cは1/4
Cの寄与分  3000万円

寄与分の原則どおりの計算をすると,
Aは-500万円,Bは-250万円,Cは2750万円,ということになりますが,
実際には,相続財産以上の寄与分は認められないため(904条の2第3項),
A,Bはゼロ,Cが2000万円を相続する,ということになります。



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