2014年10月14日火曜日

異母・異父の兄弟姉妹の法定相続分

相続においてもめやすいのは,相続人が多い場合,というのは感覚的にも理解いただけると思います。

どういう場合に相続人が多くなるか,というと,被相続人が子だくさんであった場合と,兄弟姉妹が相続人となる場合,ということになろうかと思います。



被相続人が子だくさんであった場合,被相続人に配偶者が居る場合には配偶者が1/2の法定相続分を持ち,残りを子が等分することになりますね。
配偶者がいない場合には,子が全遺産を等分する法定相続分があることになります。

また,兄弟姉妹が相続人となる場合,被相続人に配偶者が居る場合には配偶者が3/4の法定相続分を持ち,残りを兄弟姉妹が等分することになります。
配偶者がいない場合には,兄弟姉妹が全遺産を等分する法定相続分があることになります。

現在は,少子高齢化の世の中で,子どもの数,きょうだいの数が少ない,あるいはいない,ということも少なくありませんが,昔は子だくさんの家庭が沢山ありました。
家父長制が残っていた当時は,それでも相続の際にもめることはあまり無かったのかも知れませんが,いまはそのような時代ではありません。

ここで問題となってくるのは,異母きょうだい,異父きょうだいの存在です。

(1)子が相続人となる場合

(例)
Aには,別れた妻Bとの間に子C,現在の妻Dとの間に子E,Fがいます。
Aが亡くなった場合の法定相続分は,それぞれいくらでしょうか。

まず,本件は,配偶者と子が相続する場合ですから,妻の法定相続分は1/2,それ以外を子が分けることになります。
Dは1/2の法定相続分を持ちます。
ちなみに,前妻Bは相続人ではありません。

それでは,子C,E,Fは残りをどのように分けるのでしょうか。

この場合,C,E,Fの法定相続分は同じです。
すなわち,1/2を3人で分けるので,1/6ずつ,ということになります。
これは,離婚の際に,子が前妻についたかどうか,ということは関係ありません。

AとBが内縁関係であった場合にはどうでしょうか。

CはAが認知することにより,Aの「非嫡出子」ということになります。

以前,民法には,非嫡出子の相続分を嫡出子の1/2とする規定がありましたが,平成25年にその規定が廃止されました。
そのため,Aの子である限り,均等な相続分を持つことになります。

では,Dが亡くなった場合に相続するのは誰でしょうか。

Aが先に亡くなっていなければ,Aが1/2の法定相続分を持ちますね。
残りを,子が分けることになります。

この事例では,E,FがDの子ですから,法定相続人となりますが,CはDの子ではないので,相続人ではありません。
したがって,E,Fが均等に分けることになり,1/4ずつ,ということになります。

(2)きょうだいが相続人となる場合

(例)
Aには,妻子がおらず,父母も亡くなっています。
ただ,父母を同じくする弟Bと,母が異なる異母妹Cがいます。
Aがなくなった場合,法定相続分はどうなるのでしょうか。

とても単純化した事例ですが,この事例でB,CはどのようにAの遺産を分割すれば良いのでしょうか。

民法900条4号ただし書きは,「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」と定めています。

すなわち,Cの法定相続分は,Bの半分ということになるため,Bが2/3,Cが1/3,というのが正解です。

なお,民法900条4号は,前述の,非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とする,と定めていた条文でもあります。
非嫡出子の場合には,生まれによる不当な差別でありますが,父母が異なるきょうだいの場合にはそうではないため,異母・異父きょうだいの相続分を1/2とする規定は,そのまま残っています。


単純化すると以上のような形になりますが,実際の相続の場面はもっと複雑であることもあります。

兄弟姉妹が相続人となるケースの場合,異母・異父きょうだいの存在のほか,兄弟が先に死亡している場合には,おい・めいに対する代襲相続が起こるため,相続人の数が,10人・20人となることも珍しくありません。

そもそも,兄弟姉妹の場合には,相続が発生する頃には疎遠になっている,という場合も多く,相続人が誰なのか,戸籍を追っていかなければ分からない,というケースも多くあります。

相続関係が複雑である場合には,その調査に手間がかかることはある程度仕方ないのですが,遺産分割においてもめないようにするためには,遺言の活用をしっかりしていくべきでしょう。
特に,兄弟姉妹が相続人となるような場合には,兄弟姉妹には遺留分が認められないことから,遺言を残しておくことにより,無用な争いを避けることができます。




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